バックアタックの速攻あり、さらにバックアタック同士での時間差ありと、非常にコンビの内容が多彩で、見ていておもしろい。可能性としてはバックアタックでのダブルクイックもあり得るわけで、一度挑戦してみてもらいたいものです。
あまりにもおもしろかったので、何度か見直してみました。ツーセッターの二人はもちろんどちらもキーパーソンなのですが、どちらかと言えば大槻選手のほうがセッターとしては今回のバレーボールを成立させる上で重要度が高いようです。
たとえば、千葉・大槻両選手のいずれかがサーブのときに連続得点が入ることが(少なくとも上記2試合では)多かったのですが、特に大槻選手が後衛になっていてアタックできないにも関わらず、ジャンプトスしに前のほうに上がってくると、それにブロックがつられるというシーンが再三ありました。最初に大槻選手がサーブを打ってきているにも関わらず、何度かラリーが続いたあとではジャンプトスにつられてしまうのです。見ていた範囲では大槻選手はバックアタックは打っていませんでしたが、千葉選手のほうは打っていましたので、大槻選手が前にいる方が、攻撃可能な選手の人数が多くなるのでしょう。千葉選手のジャンプサーブそのものも強力そうでしたし、大槻選手が打って来るようになり、攻撃が1枚増えた形になって混乱するということなのでしょう。これは、しっかり確認さえすれば良いことのはずではありますが、それがなかなかできないということのようです。
あと、相手のサーブのときには、センターの選手が前に出ていることが多いようでした。センターは相手がサーブを打つと、後ろに戻って攻撃に加わっていたようで、確実にサーブレシーブをしない位置にいることで、1枚の攻撃を確実に確保している。そして、アタッカーの渡部選手と松本選手が二人ともオープントスは十分上げることができて、セッターも二人とも十分なアタッカーであるということから、アタッカーとセッターの間での切り返し(いわゆる共栄スペシャル)も含めて、攻撃の幅がきわめて広いという、共栄学園独特の状況が生まれているわけです。
全日本でもこういったプレイができれば、世界でも上位に入ることができる可能性があるのではないかと思いましたが、残念ながら現在の実際の全日本チームを考えるとむずかしいように思います。ツーセッターの二人ともが十分なアタッカーである必要がありますので、現時点での全日本の正セッターである竹下選手では無理と思われます。竹下選手はもっと別の形のときの良いセッターですので、現在のメンバー構成の全日本では上記のようなことはしない方が良いでしょう。しかも上記の分析から考えると、できれば二人とも左利きでしかもバックアタックが打てるほうが良いわけですが、現時点ではそういう選手は一人も思いつきません。千葉・大槻両選手と同じように片方が左利きでもう片方がバックアタックが打てるという組み合わせであれば、デンソーの温水選手とスプリングスの満永選手という組み合わせで何とか可能性があるというぐらいでしょう。ただし、満永選手が十分にトスの練習をした上、他のアタッカー陣と合わせてチームとして熟成させる必要もあるでしょう。そして、まさにその熟成させる必要があるという点が、各チームから集まってくる全日本チームという現状ではむずかしいように思います。バックアタックの速攻や時間差は、集まってくるという状況ではかなりむずかしいというのが私見です。以前のように、単独チーム主体で、いくらか他のチームから選手が入り、監督もその単独チームの監督が兼任しているといった形の方が、こういった高度なコンビバレーは実現しやすいのではないかと思います。そうでなければ、すべてのチームがツーセッター制を採用していて、だいたい同じコンビはやっていて、あとはタイミングを少し合わせるだけという状況であれば、複数のチームから全日本を構成しても、そういったことが可能になるかもしれません。
左利きでしかもバックアタックを打つことができるセッター二人でツーセッター制をできれば、バックにいるセッターがアタックラインの後ろでジャンプトスと見せて、そこからツーで打ってくることもなども選択肢に入ってわけですくるから、共栄学園よりもさらにバリエーションが増えることになります。全日本でやるならば、これぐらいのところまでやってほしいものです。
それにしても、全日本の場合で、現在のチーム構成での栗原選手や大山選手のような選手が2本目が自分のところに来たときにセッターに切り返すか(あるいはさせるか)というと、これは疑問が残ります。共栄学園はチームの中でこの二人に当たる選手をセッターにするということをやっているようですし、他の選手もほぼ同じ身長なわけです。つまり、全日本の場合であれば栗原・大山両選手クラスの身長の選手が多数いる中で、最もバレーセンスがあって、その時点ですでに十分通用するアタックをしている選手をセッターにする。そんなことを全日本でやるでしょうか?しかも全体のコンビが合うためにはチームとして熟成させることが必要なわけです。こう考えてくると、たとえ柳本監督がツーセッター制に興味を持って採用したとしても、たぶんあのバレーボールは全日本では実現しないような気がしてきます。
このように考えてくると、たぶん、今回の共栄学園のようなバレーボールは、高校バレーの場でしか実現はむずかしく、しかもそれもおそらく今年限りで、高校レベルで再度、あるいは他のレベルで見ることができるのは、かなり先になる可能性が高いように思います。もちろん、こういった予測がはずれて、全日本でおもしろいバレーボールを見ることができればその方が良いのですが。いずれにせよ、今後のインターハイや国体での高校バレーもテレビ放映があれば、ぜひ共栄学園をチェックしていきたいものです。
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